次の文章は、食中毒事故の原因食材を厚生大臣(当時)が公表したこと(以下 「本件公表」という。)について、その国家賠償責任が問われた訴訟の判決文であ る。この判決の内容に明らかに反しているものはどれか。 食中毒事故が起こった場合、その発生原因を特定して公表することに関して、直接 これを定めた法律の規定が存在しないのは原告の指摘するとおりである。しかし、行 政機関が私人に関する事実を公表したとしても、それは直接その私人の権利を制限し あるいはその私人に義務を課すものではないから、には当たらず、いわゆる 非権力的に該当し、その直接の根拠となる法律上の規定が存在しないからと いって、それだけで直ちに違法の問題が生じることはないというべきである。もちろ ん、その所管する事務とまったくかけ離れた事項について公表した場合には、それだ けで違法の問題が生じることも考えられるが、本件各報告の公表はそのような場合で はない。すなわち、厚生省は、公衆衛生行政・食品衛生行政を担い、その所管する食 品衛生法は、「飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、公衆衛生の向上及び増 進に寄与すること」を目的としている(法1条)のであるから、本件集団下痢症の原 因を究明する本件各報告の作成・公表は、厚生省及び厚生大臣の所管する事務の範囲 内に含まれることは明らかである。このように、厚生大臣がその所管する事務の範囲 内において行い、かつ、国民の権利を制限し、義務を課すことを目的としてなされた ものではなく、またそのような効果も存しない本件各報告の公表について、これを許 容する法律上の直接の根拠がないからといって、それだけで直ちに違反の違 法の問題が生じるとはいえない。 (大阪地裁平成14年3月15日判決・時報1783号97頁)