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情報資産台帳に基づくリスクアセスメントと運用状況の点検

オリジナル精密部品メーカーが台帳をもとにリスク値を算定し、予算内で対策を選び、シャドーIT・アクセス権の棚卸し・内部監査の指摘に対応する。目安 35分

情報資産のリスクアセスメントと運用状況の点検に関する次の記述を読んで、設問に答えよ。

D社は、従業員280名の精密部品メーカーである。取引先の自動車部品メーカーや医療機器メーカーから図面データを預かり、試作品と量産品を製造している。D社には、総務部、経理部、営業部、設計部、製造部及び情報システム部がある。

D社では、専務を委員長とする情報セキュリティ委員会(以下、委員会という)が情報セキュリティに関する規程を定めている。昨年、主要な取引先から、預けた図面データの管理状況について説明を求められたことを機に、委員会は、全部署で情報資産台帳(以下、台帳という)を作成させ、それをもとにリスクアセスメントを行うことにした。情報システム部のK主任が、部下のLさんとともに担当することになった。

〔リスクアセスメントの手順〕

D社の情報セキュリティ規程では、リスクアセスメントの手順を次のとおり定めている。この手順は、IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第3.1版の付録「リスク分析シート」の考え方を参考にしたものである。

  1. 台帳の資産ごとに、機密性、完全性及び可用性をそれぞれ1〜3の3段階で評価する(3が最も影響が大きい)。三つの評価値の最大値を、その資産の重要度とする。
  2. 資産ごとに想定する脅威について、対策を講じない場合の発生頻度(以下、脅威という)を1〜3で評価する(3が最も頻繁)。また、その脅威に対する現状の対策の不十分さ(以下、脆弱性という)を1〜3で評価する(3が最も不十分)。
  3. 被害発生可能性を「脅威÷(4−脆弱性)」で求め、小数点以下を切り上げた整数とする。
  4. リスク値を「重要度×被害発生可能性」で求め、6以上を「大」、3以上5以下を「中」、2以下を「小」と判定する。
  5. 「大」のリスクには必ず対策を講じ、実施後のリスク値を「中」以下にする。「中」のリスクは対策を検討し、対策を講じない場合はリスクを保有する。「小」のリスクは保有する。
  6. リスクを保有する場合、及び対策後に残ったリスク(以下、残留リスクという)については、その資産の管理部署の部長(以下、リスク所有者という)が内容を確認して受容を承認し、承認者と日付を台帳に記録する。

なお、サイバー保険のように損失の一部を他者に負担させる対策は、リスク値の算定には反映しない。

〔台帳とリスク値の算定〕

各部署から提出された台帳の抜粋を表1に、K主任とLさんが各部署への聞き取りを基に作成した脅威と脆弱性の評価を表2に示す。

表1 台帳(抜粋)

No.資産名内容管理部署保存場所機密性完全性可用性保存期限
1顧客図面データ取引先から預かったCADデータ設計部社内ファイルサーバ332取引終了後5年
2社員情報氏名、住所、給与、扶養家族など総務部人事SaaS H321退職後7年
3受発注データ見積額、注文数量、納期営業部社内の販売管理サーバ22310年
4製品カタログ公開中の製品カタログPDF営業部Webサイト121廃版まで
5会計データ仕訳、取引先の口座情報経理部会計クラウドK23210年

表2 脅威と脆弱性の評価

No.想定する脅威現状の主な弱点重要度脅威脆弱性被害発生可能性リスク値判定
1ランサムウェアによるファイルの暗号化バックアップ先のNASが社内LANに常時接続されている【 a 】32【 b 】――
2人事SaaS Hへの不正ログイン利用者IDとパスワードだけで認証している32326大
3販売管理サーバの故障保守契約はあるが予備機がない3121【 c 】―
4Webサイトの改ざん(CMSの更新は自動適用済み)22112小
5会計クラウドKへの不正ログイン(多要素認証を設定済み)32113中

注記 ―は、本文の都合で省略している。

〔対策の検討〕

K主任は、「大」と判定されたリスクについて対策案を整理した(表3)。今年度の追加予算は年額200万円である。

表3 対策案

案対象No.内容年額費用実施後の脆弱性
案11書換え不可の設定ができる外部ストレージに日次でバックアップを取得し、社内LANからは書込み専用の経路だけを許可する120万円1
案21全PCとサーバにEDRを導入し、外部の監視サービスに検知時の対応を委託する300万円1
案31サイバー保険に加入し、データ復旧費用や賠償費用の一部を補償させる80万円(算定に反映しない)
案42人事SaaS Hの多要素認証を全利用者に設定する(追加の利用料はない)0円1
案52人事SaaS Hの利用をやめ、社員情報を紙の台帳で管理する90万円(事務作業の増加分)―

注記 案5を実施すると、社員情報を人事SaaS Hに置かなくなるので、No.2で想定する脅威(人事SaaS Hへの不正ログイン)そのものが生じなくなる。

K主任は、「大」のリスクを全て「中」以下にでき、費用が最も小さい組合せを委員会に提案した。この組合せを実施すると、No.1のリスク値は【 d 】になる見込みである。

委員会では、専務から「案3の保険に入れば、案1を実施しなくてもよいのではないか」という質問があった。K主任は、①案3は、No.1のリスクへの対応として単独では不十分であると説明した。委員会は、案3については来年度に改めて検討することにした。

〔運用状況の点検〕

台帳の作成後、K主任は、台帳が実態と合っているかを点検した。まず、Webプロキシのログから、9月の1か月間のクラウドサービス宛ての通信を集計した(表4)。

表4 クラウドサービス宛て通信の集計(9月、抜粋)

項番宛先サービス台帳への記載主な利用部署利用者数アップロード量
1人事SaaS Hあり(No.2)総務部40.2GB
2会計クラウドKあり(No.5)経理部50.1GB
3ファイル転送サービスFなし設計部718.5GB
4生成AIサービスGなし営業部120.05GB
5地図サービスMなし営業部200.01GB未満

聞き取りの結果、項番3は、設計部の担当者が、試作の協力会社とCADデータをやり取りするために個人で登録した無料プランを使っていた。項番4は、営業部の担当者が提案書の文章を整えるために個人のアカウントで使っており、見積額を含む文章を入力した例があった。項番5は、顧客の所在地を調べるために閲覧しているだけであった。

次に、Lさんが、社内ファイルサーバの「顧客図面」フォルダのアクセス権を棚卸しした(表5)。D社の規程では、アクセス権は業務上必要な個人の利用者IDだけに付与し、共用の利用者IDは使用しないことにしている。また、他部署の従業員への読取権限の付与には、設計部長の承認が必要である。

表5 「顧客図面」フォルダのアクセス権(抜粋)

利用者ID利用者登録時の所属権限最終ログオン日備考
d-sato佐藤設計部変更9月30日―
d-kato加藤設計部変更6月27日7月1日付で製造部(生産管理)に異動。異動後の業務で図面は扱わない
d-guest―設計部変更9月30日設計部の作業用PCで共用
s-mori森営業部読取9月25日顧客への製品説明で図面を閲覧する業務がある。読取権限の付与について設計部長の承認記録あり
t-abe阿部製造部読取6月28日6月30日付で退職

〔内部監査での指摘〕

10月に、内部監査室が台帳とリスクアセスメントの運用を監査し、表6の指摘をした。

表6 内部監査の指摘(抜粋)

指摘内容
指摘1台帳は年1回の見直しだけで更新しており、年度の途中で利用を始めたクラウドサービスが台帳に記載されていない。
指摘2No.3のリスクは対策を講じずに保有することになっているが、台帳上の承認者が情報システム部のLさんになっている。
指摘3ファイルサーバのアクセスログは取得しているが、定期的に確認した記録がない。

K主任は、指摘1への対応として、年1回の見直しに加えて、②台帳を最新に保つための手続を規程に追加することにした。また、指摘2については、No.3の承認をやり直すことにし、指摘3については、表5の棚卸しと合わせて四半期ごとにログを確認する担当者を決めた。

設問1

〔台帳とリスク値の算定〕について答えよ。 表2中の【 a 】〜【 c 】に入れる適切な数値を答えよ。

設問2(1)

〔対策の検討〕について答えよ。 K主任が委員会に提案した対策の組合せを、表3の案の番号で全て答えよ。また、本文中の【 d 】に入れる適切な数値を答えよ。

設問2(2)

表3の案3及び案5は、それぞれリスク対応のどれに当たるか。解答群の中から選び、記号で答えよ。 解答群 - ア リスク回避 - イ リスク移転 - ウ リスク低減 - エ リスク保有

設問3

本文中の下線①について、案3が単独では不十分である理由を、40字以内で答えよ。

0 / 40字

設問4

〔運用状況の点検〕について答えよ。 表4の利用のうち、表1のNo.1の資産の機密性を損なうおそれが最も大きいものを項番で答えよ。

設問5

表5について、規程に照らして削除又は権限の見直しが必要な利用者IDを全て答えよ。

設問6

〔内部監査での指摘〕について答えよ。 表6の指摘2は、D社の手順のどの点に反しているか。40字以内で答えよ。

0 / 40字

設問7

本文中の下線②について、K主任が追加した、クラウドサービスなどの利用を始める前の手続の内容を、表4の状況とD社のリスクアセスメントの手順を踏まえて50字以内で答えよ。

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自己採点: ◯ 0 / △ 0 / ✕ 0(全8設問)

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